守口市

怪影はそれまで見えていたが、死刑と同時に、ぱッとうしろへさがって、小屋のかげに消えた。それからあとは何事もなかった。絞首にきめられてある時間がたった。執官は、手はずのとおり、トイレつまり 守口市をおろすように信号を送った。すると宙ぶらりんになっていた死体は、すーッと下へおりていって、やがて穴の中に見えなくなってしまった。(なあんだ、補官は、やっぱり刑台の地下室に待っていたのか)執官は安心した。執行官と教師は、そこで顔を見あわせたが、さっき死囚に近づいた奇妙な影については、どっちも何にもいわなかった。そんなことをいうと、いかにも自分が死執行に立ちあって、心をみだしているように、相手に思われるのがいやだったからである。二人は、連れだって、死刑台の下の地下室へおりていった。そこにはいつものとおり、補官が死んだ刑囚の首から、トイレつまり 守口市をはずしていた。「大丈夫かね」執官は、補官に声をかけた。「はい。うまくいきました。異状なしです」と、補官はまったくふだんの調子でこたえた。