交野市

執行官たちは念のために構内を見まわったが、べつに怪しい者を見かけなかったから。もっとも夜もふけていたし、トイレつまり 交野市もすんだことゆえ、みんな早くその場を引きあげたくて、気がいそいだせいもあろう。そこで死刑となった火辻軍平の死体は、棺桶におさめられたのち、そこから遠くないところにあるトイレつまり 交野市へ、はこびいれられた。この阿堂は、やはり塀ぎわに建っている独立のかんたんな堂であって、お寺のお堂のような形はしていなかった。しかし中にはいってみると、お寺の本堂そっくりだった。奥の正面には、西をうしろにして木像の阿弥来が立っており、その前に、にぎやかな仏壇がこしらえてあった。灯を利用したみあかしが、古ぼけた銀製の蓮の花を照らしていた。線立や焼香台もあった。火辻軍平のなきがらのはいった棺桶は、この前にはこびこまれ、北向きに安置された。それから太い線香に火が点ぜられ、教師が焼香し、鉦をたたき、読経した。この儀式はまもなく終り、一同はこの阿弥堂から退出した。あとは阿弥陀さまと棺桶ばかりとなった。